スーツを脱いだシニアたちが簡単に再就職できない理由

横浜のランチ時間帯は人間観察にもってこいだ。ビルから会社員が一斉にランチを求めに外に出てくる。誰もがランチを食べにお店を探す。老若男女を一度に観察できる。スーツを着た会社員の中でひときわ目立つスーツを脱いだシニアたちがいる。仕事をしていないシニアたちだ。遊びを求めて街中を歩いているのか、ただ暇を潰しているのかは分からない。

仕事らしい仕事をしていないシニアの年齢は70歳を過ぎた人達が多い。70歳を過ぎると働きたくても働けないシニアが増えてくる。年金と貯蓄で経済的に問題がなければ、自由気ままな生活が送れる。一度鳥かごから自由な外に飛び立つと一時的に今までの欲求を満たすのだが、自由すぎて自分にわがままになる。自分に都合の良いことを周りに要求し始める。

人不足と社会は叫んでいるが、求めている人材は会社の言うことを従順に聞き文句なく働く労働者である。自分の都合を条件にして仕事をするシニアには仕事がない。その前に年齢で書類審査落ちになる。従って平日の昼間に町中で見かけるシニア男性は暇を持て余し歩き回る羊になる。

ある意味ではスーツを着て仕事をしているシニア男性は幸せかもしれない。暇に殺されないでやるべきことをやってお金を稼いでいる。当然、仕事で体を動かす為健康な体を維持できやすい。

働けるのに働かない、または働けないシニアたちなのか?

定年退職して年金をもらい始めると仕事現場の感覚を失う。この感覚を失うと以前脱いだスーツが着られなくなる。鳥籠から放たれた小鳥は二度と鳥籠に戻りたくない。

組織の呪縛から放たれると自由の味に慣れ親しんでしまう。再雇用されて働き出すには、余程の動機が必要になる。働かないと食べて行けないという切迫感がないと脱いだスーツを着ない。

働けるのに働かないシニア

年金と貯蓄で経済的に問題なく生活が出来ているシニアは別に働く必要がない。働こうと思えば働ける健康と身体があるのだが、今味わっている自由を束縛する環境に戻りたいとは思っていない。誰かの監督下で働くという精神的な苦痛をよしとしていない。そんなシニアは一度脱いだスーツを二度と着ない。

ただ、自分の都合を満たしてくれる仕事環境を提供してくれるならば働いても良いと思っているシニアもいる。お金のためではなく、暇を持て余す環境から逃げるためである。社会とのつながりが切れない程度の仕事である。週2回程度の仕事ならば、気分転換になる。自分の職務経歴が生きる職場であれば喜んで働きに行く。

働けるのに働けないシニア

働けないシニアは年齢制限で自分の職務経歴を生かす仕事にありつけない。誰でも構わない仕事でも年齢で若い労働者が優先される。70歳を境に年齢制限という壁が高くそびえ立つ。70歳を過ぎても健康で体力があるシニアは大勢いる。仕事があれば働きたいという意志と希望があるのに社会はそのチャンスを提供していない。

仕事から離れている時間が多ければ多いほど組織で働く感覚が鈍っていく。私は会社にぶら下がって働いていたときから19年が経過している。もう、とても普通の会社組織で適応できるとは思えない。シニア起業であるので自分の都合の良いように仕事をしている。上司の都合に合わせる必要がない働き方が19年間続けばもう普通の会社で再就職なんて出来ない。

どうしても働きたければ

下記の選択肢しかない。

  1. 忍耐力と我慢、精神的なストレスに対抗できる精神力で中小企業で「おい、そこの爺!」と呼ばれながら働く
  2. 自分で仕事を作る

やりたい仕事があるならば、その仕事で起業することである。

自分で作り出した仕事であるならば、一度脱いだスーツを着られる。または、スーツを着て活動する目標が見つかるともう一度スーツを着出す。

自発的に働こうとする気持ちが生まれるとシニアは一度脱いだスーツを拾い着始める。多くのシニアは、仕事をしない子供に戻り始めている。良い、悪いは別にして人材の浪費である。シニアは子供と違って遊びから世の中を学ぶ事が出来ない。既に経験済みだからだ。

暇なシニアには自由な時間の中に発見と学びがない

子供の仕事は、遊ぶ事。遊びながら大人になる準備を肉体的に精神的にする。スーツを脱いだシニアたちが遊び出すと遊びの中に発見が少ない。学びよりも時間の浪費でしかない。

老後は楽をしたいと夢見て定年退職を迎えた老人たちが今の70歳代。大企業を定年退職した元会社員は厚生年金と国民年金だけで経済的に余裕がある生活が出来る。横浜の街中で帽子をかぶり、リュックを背負いながら、行き場を探しながら歩いているシニアを見て羨ましいと感じる。

本人たちの心情を代弁するならば、「決して羨ましいがる状態ではない」と言って来る。

自宅にいると奥方たちに嫌がられるからだと・・・仕方なく街に出てくる。カフェでコーヒーを飲んでも何時間もいられない。毎日本を読んでも飽きが来る。何か物足りない人生を送っているような感じを持つ。老後は楽をしたいと夢見たが、いざ、楽を経験し始めると忙しい方がまだましではないかと思い始める。

会社から求められるシニア人材にならない限り再就職はつまらない

いざ再就職活動をしてみると昔の感覚が今の時代の感覚と合わなくなっているのに気がつく。面接を受けても経済的に困っていないのでわがままを言ってしまう。つい、大企業の視線で話をしてしまう。再就職先は中小企業がほとんどだ。使えるシニアではなく使えないわがままなシニアに写ってしまう。

経済的に困っていないから事は余計に難しくする。一度、組織という呪縛から解かれて自由を味わった小鳥(組織の歯車)は、自分の歯車にあわない組織でしか再就職先が見つからない。シニアになると忍耐力が落ちる。我慢出来なくなる。わがままになる。「働けるけど働けない、働かないシニア」になってしまう。

自分に自信があるシニア、自分に実力があると信じているシニアたちは、一度、起業する事を経験すべきだろう。そして、自分の実力を試すべきである。大企業の元会社員であればあるほど、自分の実力の無さ、手に職の無さ、人望の無さを味わう。

スーツを脱いだシニアたちの中で一からやり直したい人は、起業や再就職で全く新しい世界を垣間見る事が出来る。新しい仕事環境でビジネスのイロハを体験できる。新しい仕事への好奇心という導火線に火が付けば、誰もが脱いだスーツを着始める。

結論

定年退職後、自由になる時間を自分の欲求で過ごすと二度と組織の歯車になる生活に戻りたくなくなる。退職後すぐに組織で働き続ける機会があるシニアは別である。一度、自由という空気と時間を味わったシニアは昔の組織人には戻れない。

戻れない理由

  1. 年金と貯蓄で経済的に問題がなければ、自分が求める働き方を再就職先に求めるためマッチングが難しくなる
  2. 新しい職場環境にスキル的に適応出来ないほどIT環境が進んでいる
  3. 過去の職務経験があるため新入社員1年生のような思考になれない
  4. 老いからくる忍耐力の衰えで新しい人間関係を築けない

組織の歯車として再就職ができる理由

  1. 経済的に働かざるを得ない状況にいるため嫌な労働環境でも我慢して働ける
  2. 専門職として再雇用される
  3. 自由な時間がいっぱいあるよりも束縛された時間で生活をすることを好む人

60歳、65歳、70歳という年齢の壁がある。年齢が増えるごとに再就職の壁は高くなる。この壁を年齢に関係なく超えるには自分で仕事を作り、自活をするしか方法がない。しかし、シニア起業は簡単ではない。この仕事でお金を稼ぎたい、稼げるという強い意志と情熱がないと失敗する。楽な起業は失敗する確率が100%である。

60歳代のうちに70歳以降のライフスタイルを決めてその方向に舵を切る生活をする必要がある。