介護ベッドでの生活はどんな生活になるのか?

介護する立場になって義母を見てきた。先週から老健施設に義母を入居させ、3か月間のリハビリ生活が始まっている。自宅での介護と違って家族による介護労働負担は無くなる。義父にとって妻の介護は、介護ヘルパーやデイサービスがあっても精神的に相当ストレスがある。今回の老健施設への入居は義父のストレスと累積した疲れを取るためにもある。

義母を老健施設に引っ越しさせた時、別れ際の義母の顔は不安で一杯のようであった。3か月間のリハビリという事は理解しているのだが、表情に出る不安は隠せない。自分が介護される立場で物事を見ていないので義母の本当の気持ちはどうなのか良く分からない。 

でも、

私もいつかは介護される側の世界に入るのは確かだと感じた。後、20年したら・・・

不自由な介護ベッドでの生活

老人が脚力を失い、自分一人で歩けなくなると介護ベッド生活に入る。介護ベッド生活が数か月続くだけで体の筋肉が減少し、ますます、自分の体を自由に動かせなくなる。認知症を伴わない介護ベッド生活ならば、脚力と体力を回復するリハビリが有効なのだが、自宅でのリハビリはあまり効果がない。家族の支援や訪問リハビリサービスを使って毎日リハビリのトレーニングをしないと脚力は簡単に戻ってくれない。

介護ベッド生活になっている義母はどんな気持ちで現状の自分を見ているのだろうか。

以下はあくまでも私の想像である

自分一人でベッドを離れるだけの体力と脚力がないと排泄が一人で出来ない。当然、おしめ紙パンツを身に付ける生活になる。紙パンツも介護ヘルパーに替えて頂くことになる。紙パンツに直接排泄することに慣れるのは、抵抗がある。トイレで排泄したいがそれが出来ない。その不自由さが辛いだろう。

食事も好きなものを作れない、食べれない、食欲もわかない。1日中ベッドの中での生活は、健常者にとっても苦痛だ。長い間のベッド生活は、生活面での刺激がない。刺激がない生活は、認知症を発症させるだけでなく体力をどんどん衰えさせる。

食欲が無く、食べる量が少なくなるにつれて自分の足から筋肉が消えて骨と皮に変わって行く姿を見る。この状態を見て自分は二度と足で歩く事が出来ないのではと思い始める。若い人のリハビリも筋肉が元に戻るまで時間と苦労が伴う。老人ならば、時間も苦痛も2倍、3倍かかるだろう。

自宅から老健施設に移されて新しい環境でリハビリに挑戦するのだが、全てが新しい経験になる。体力がないので変化が体を疲れさせる。栄養士が栄養バランスを整えるメニューを用意し、体力を回復させる料理を食べる事を勧める。規則正しい生活を老健施設で送ることで感覚を普通の生活感覚に戻す。これに慣れるまで苦痛と不安が混ざり合う。

脚力を回復させるには、まず、落ちて行った体力を回復させるためにバランスの取れた食事を積極的取ることから始まる。筋肉を作るには、材料が必要だ。食欲が出て、3度の食事が普通に取れるようになれば、体全体の筋力を強化するリハビリが始まる。

足の筋肉だけを回復させるのではなく、体全体の筋肉を回復させることで足の筋肉も同時に回復させるリハビリになる。義母は、老健施設でのリハビリが本当に自分の健康と脚力を回復させる効果があるか疑心暗鬼だと思う。こんなに体力が落ちて、足も骨と皮であるのに回復できるのだろうかと。

これをやり続ければ確実に自分の体は元に戻って行くという確信を感じるまで義母の不安は無くならない。

このリハビリで良くならなければ、介護付き有料老人ホームでの生活になることは分かっている。そこで自分の人生を終えるしかない事も自覚できているだろう。85歳という老齢からくる体力の低下。本当に自分は回復して自分の足で歩ける生活に戻れるのだろうか。

義母の気持ちになって自分で想像した介護される側の世界を描いてみた。