肉体は歳と共に衰えて行く。これは実感できる。精神はどうか。肉体ほど実感がないと私は感じている。夫婦二人の生活が始まってどちらかが他界するまで夫婦二人の生活が続く。家に帰れば、家内が夕食を作って待っていてくれる。このような時間がいつまで続くか分からないが、必ず。終わりが来る。
それは、独身であった若い頃に結婚相手を見つけて一緒にいる時間を長く持とうとする事と同じだ。人生の流れは、独身>夫婦>家族>夫婦>独身という感じで移って行く。
私たち夫婦は、また、二人だけの新婚時代に戻っている。両親の介護支援はあるが、夫婦二人の生活が生まれている。新婚の頃のように赤ちゃんを作るという事は無くなり、自分たち二人の生活を楽しむ時間を得ている。
そして、
ある日ある時、どちらかが寿命を全うし旅立つ。あとに残された片割れは、また、独身の生活を始める。若さが無い、くたびれた肉体で寿命を全うしようとする。生と死。始めと終わり。どちらが後に残ろうとも精神的な苦痛は生まれる。二人で楽しんだ共有の時間が消えるからだ。自宅に帰っても誰も待っていない。待っているのはペットの犬や猫かもしれない。